うさぎが首をかしげる仕草は可愛いものですが、傾いている状態が続いている場合は「斜頸」という症状を引き起こしている可能性があります。
斜頸はどの年齢のうさぎでも発症する可能性があり、さまざまな症状があらわれ餌が食べられなくなると、命に関わる状態になってしまうこともあるため、早期発見と治療が必要です。
今回はうさぎの斜頸の症状や原因、治療法から予防方法までをご紹介していきます。
うさぎの斜頸とは?どんな症状?
うさぎの斜頸とは病名ではなく、首が傾いている症状のことを指します。
うさぎの年齢に関係なく発症しますが、免疫力や抵抗力の落ちた高齢のうさぎはとくに注意が必要です。
軽度の斜頸なら首が少し傾く程度で、いつも通り元気も食欲もあり他に症状がない場合もあります。しかし時間の経過とともに重症化すると、首が90℃以上傾いたり、他の症状があらわれます。
首が傾くことで体の平衡感覚がなくなり、自分が行きたい方向に進めず、つまずいたりふらついたり、足を引きずったり、まっすぐ歩けなくなったりします。
また斜頸がひどくなると体も傾いてしまいそのまま倒れてしまう「ローリング」という症状が出ることも。起き上がろうとしても平衡感覚を失っているため再び倒れてしまい、もがいたりぐるぐる回り続けてしまいます。
さらにこのローリングという症状が出るとぐるぐると動き回るため、ケージなどで怪我をする危険もあるので、クッションやタオルなどで保護してあげましょう。
パスツレラ菌という細菌が原因の場合は、斜頸の症状が出る前か同じタイミングで、くしゃみや鼻水などのスナッフル症状がでることもあります。
首の傾きやローリング、眼振、食欲不振や元気がないなどの症状がある場合は、早急にうさぎに詳しい先生がいる動物病院に連れていきましょう。
重症化すると命に関わる可能性も
うさぎの斜頸は症状の進行が遅い場合も早い場合もあります。重症化すると、首の傾きが酷くなったり、ローリングや眼振といった症状が併発し、立ち上がれなくなるため、自分で餌が食べられなくなったり食欲不振になります。
草食動物のうさぎにとって餌が食べられない状態は非常に危険です。うさぎの餌は繊維質で、この繊維質は栄養となるとともに腸を動かす原動力にもなっています。
うさぎは1日餌や水をとらないと、胃腸の動きが低下し、胃や腸にガスが溜まって苦しくなるためますます食べられなくなったり、脱水症状になってしまいます。
また栄養が取れないと腎臓や肝臓などさまざまな臓器もダメージを受けるため命に関わる可能性もあります。
斜頸に気づいてから様子を見ているうちに急に症状が悪化したり、餌や水をとらなくなってから1日経っていたということがないように、早めに動物病院に行きましょう。
症状が現れてから治療を開始する時間が長ければ長いほど、重症化したり最悪の場合は突然死につながることもあります。
眼振を伴う場合は要注意
寄生虫が脳に侵入することにより、眼球が上下や左右に動き続けてしまう眼振を伴う場合も要注意です。
常に目が回っている状態なので、当然食欲もなくなってしまいます。
眼振の症状がでている場合は、斜頸が進行している可能性があるためすぐに動物病院に行きましょう。
うさぎの斜頸の原因
うさぎの斜頸は、細菌感染や寄生虫などによって、平衡感覚を司る部分が侵されることが原因で、さまざまな症状が現れます。
脳の中枢機能が侵されて起こる中枢性と、脳以外の神経が侵されて起こる末梢性に分かれます。
中枢性の斜頸の原因の1つが、エンセファリトゾーン症という寄生虫が脳に侵入することによって起こる病気です。
末梢性の斜頸の原因としては、パスツレラ感染による外耳炎があります。口から耳管を通って細菌が侵入し、膿が形成されて起こります。
上記2つの原因以外にも、頭や首の損傷、脳の腫瘍などによって発症する場合や、原因不明の突発性のものもあります。
外耳炎
末梢性の斜頸の原因の1つとして外耳炎があります。外耳炎はパスツレラ菌などの細菌や真菌、耳ダニなどの感染によって外耳に炎症が起こる病気です。
外耳にダメージを受けることで傾斜を引き起こします。このとき斜頸とともにくしゃみや鼻水などのスナッフル症状が見られることもあります。
また外耳炎から中耳炎、内耳炎に波及して発症することも。
パスツレラ菌が全身に広がってしまうと、腹膜炎や肺炎を引き起こして命を落とす危険もあります。
外耳炎の症状としては、耳垢がたくさん出るようになります。そして耳を痒がったり痛がったり、首を振ったり、臭いがするなどの症状も。このとき爪が伸びていると、耳をかいた時に傷つけてしまうこともあります。
いつもと違う様子があれば注意しましょう。
耳がたれているロップイヤー種は、耳の中が蒸れて菌が繁殖しやすいためとくに注意が必要です。
エンセファリトゾーン症
中枢性の斜頸の原因の1つに、エンセファリトゾーン症があります。
エンセファリトゾーン症とは、エンセファリトゾーンという寄生虫が脳に侵入し、髄膜脳脊髄炎を引き起こす病気です。これにより斜頸がおこります。
40%以上のうさぎはもとからこのエンセファリトゾーンに感染していると言われています。健康なうさぎでも感染歴があることが多く、感染しても無症状ということも多いです。
ストレスや飼育環境、持病などにより、体力や免疫力が落ちたことなどが原因で発症してしまいます。
エンセファリトゾーンに感染したうさぎが妊娠すると、胎児にも感染することもあります。
多頭飼育の場合は腎臓で寄生虫が増殖し、胞子が尿中へ排泄されることによってトイレで感染することもあるので、感染しているうさぎの隔離が必要です。
エンセファリトゾーンに感染すると、けいれんや麻痺、ブドウ膜炎、白内障、腎不全につながる場合もあります。
また、エンセファリトゾーンによる斜頸の初期症状として、うさぎの耳が片方だけ下がるということもあります。これは見落としてしまうことが多いので、注意が必要です。
うさぎの斜頸の治療方法
うさぎの斜頸は原因に合わせて治療方法を決定します。まずは原因を特定するために、病院で診察を受けレントゲンなどで外傷や腫瘍がないかを調べましょう。
細菌感染が原因であれば抗生剤を投与し、エンセファリトゾーン症が原因の場合は長期的に駆虫薬を投与します。
細菌感染なのか、エンセファリトゾーン感染なのか原因が特定できない場合もあります。その場合は、両方の治療を同時に行います。
ローリングをしている場合は、目を傷つける可能性があるので、必要に応じて点眼薬で保護します。
食欲がない場合は、胃腸を動かす薬や食欲増進剤を投与したり、水が飲めない場合は点滴をします。
これら病院での治療と並行して、自宅では投薬や食事の補助・流動食の強制給餌など手厚い看護が必要です。
このようにうさぎの斜頸は複数回の通院と自宅での投薬と食事補助など、完治するまでに時間がかかり、すぐに再発することもあります。 また他の症状が落ち着いても、首の傾きだけ生涯残ってしまうことも。
うさぎの斜頸に気がついたら、早めにうさぎの治療に精通している動物病院に連れていきましょう。元気さや食欲が変わらない子もいますが、症状がひどくなる前に治療することが重要です。
うさぎの斜頸は自然治癒するのか
うさぎの斜頸は自然治癒することはありません。
先述したとおり、うさぎの斜頸には原因に合わせて抗生剤や駆虫薬、ステロイド薬などを使って根気よく治療を続ける必要があります。
いつも通り元気で食欲があるからと様子を見ていても、症状が急に悪化する場合もあるので、早急に病院に連れていきましょう。
薬の処方が早ければ早いほど治りも早くなりますし、発見から治療までの時間が長くなればなるほど突然死の可能性も高くなってしまいます。
うさぎの斜頸の治療費の相場
うさぎの斜頸の治療費の相場は、ペット保険に入っていない場合は約15,000円〜40,000円ほど。
症状の進み具合や、治療期間や通院の回数によっても変わります。
通院が終わるまでに1ヶ月以上、治療費は数万円かかると思っておきましょう。
うさぎの斜頸の予防方法
健康なうさぎは、エンセファリトゾーン症やパスツレラ感染症に感染していても症状が現れない「不顕性感染」であることが多いです。
それが、ストレスや加齢によって免疫力が低下してしまうことによって発症します。
そのためうさぎの斜頸を予防するには、とにかくストレスを与えないこと、そして飼育環境を清潔に保つことが大切です。
高温多湿や寒さ、急な温度の変化も発症のきっかけになってしまうので、適切な温度や湿度に保ち、エアコンの風などが直接当たらないようにケージの場所などを工夫することも大切です。
ケージ内の掃除はこまめに行い、つねに清潔な飼育環境を保ちましょう。
多頭飼いの場合は、1頭ずつケージを分けましょう。感染しているうさぎがいる場合は、他のうさぎと接触させないことが極めて重要です。
しかしどんなに気をつけていても、うさぎの斜頸は100%予防することは難しいものです。
そのため毎日うさぎの様子をしっかり観察し、斜頸が疑われる場合は早急に動物病院に連れていきましょう。早期発見が大切です。
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